あっさり
鶏キーマのカレー

2018 May

あっさり鶏キーマのカレーあっさり鶏キーマのカレー

インタビュー:相馬 由理

相馬 由理:今月のカレーは何ですか?

鈴木貴久:あっさり鶏キーマです。あっさりの意味もあるんですけど、あっさりとアサリがかかってます。。

(笑)。アサリと鶏なんですね。

アサリの出汁を使ったスープカレーと、その出汁をとったときの身を鶏のキーマにしてます。器にスープカレー、ご飯の上にキーマで、一緒に食べてもらいます。

おお。基本のキーマは何ですか?

ラムですね。お店によって色々あると思いますけど、うちはラムです。

6年で4回目くらい

アサリを使おうと思ったのはなんでですか?

うちもう6年くらいやっていて、最初から月替わりでやっていて、このカレーはたぶん出すのが4回目くらいなんです。
結構人気があるので出させてもらってるんですけど、元々は魚介系で出汁が強く出るのを考えたときに…
ちょうどアサリのみそ汁を飲んだ時の感覚を、そのままカレーに持っていけないかなという感じで、最初作りました。

アサリ、人気なんですね。

そうですね、毎年まぁなんか恒例みたいな感じで。一応4月5月くらいはアサリの時期なんで。

アサリと鶏は合うんですか?

そうですね。その~、最初はほんとにアサリだけのカレーだったんですよ。ご飯とアサリのカレー。あっさりアサリカレーっていう感じで、その具材もアサリのスープの中に入れてやってたんですけど、もうちょっとなんかできないかなと…
で、アサリの味が結構しっかりしてるんで、それをまぁあんまり壊さないキーマを考えて、鶏がやっぱり一番さっぱりしてるんで。旨味が入りやすい、味が出やすい。ラムとか使っちゃうと味が喧嘩しちゃうんで。実際そこまでやったことはないですけどね、たぶん合わないだろうな…と。

スパイスの感じが
決まってるんです。

そうなんですね。基本のキーマとはスパイスが違ったりするんですか?

違います。そうですね、自分結構鶏のキーマを作るときに、スパイスの感じが決まってるんです。それをベースに、今回アサリが入ってるんで、ちょっとスパイスを…増やしたというか、ちょっと変えてます。

具体的には…?

えっと、鶏ひき肉だと結構コリアンダーをベースに、ターメリック、カイエン…、まぁほんとによくある定番なんですけど、特にはスパイスというか、タイムとか。ハーブですね。

カレーにはあんまり入ってないものですか?

タイカレーとか東南アジアのカレーには入ってることはあります。スープカレーとかに使われることはありますね、バジルとかタイムとかは。

でもあまり使われるイメージがないです。

そうですね~。

魚介はアサリ以外にも使われることあるんですか?

ありますよ。
エビと、サンマと…イカと、シラスとかも。

へぇ~カレーぽくない。珍しいですよね?

そうですね、やっぱりその、カレーになったときに、スパイスと旨味のバランスが良い感じで…
旨味がある程度強い具材じゃないとなかなか難しいかなと思います。

できなくはない

カレーと合うのって限られてるんですね。

他に魚の種類を変えてできなくはないと思うんですけど。

サンマもキーマとかになるんですか?

いや、サンマだとほんとに汁のカレーで、サンマが3つくらい入ってる。
トマトベースだったりします。

よかったな、っていうのはあって…

トマトベース意外です、食べてみたい。定番の月替わりも。
今回の鶏みたいにちょっと工夫を加えてみたり進化していくものなんですか?

そう…ですね、そうしたいとは思うんですけど、そのまま出すこともあります。でもその、1ヶ月出してて、最初はこれで良いと思って出して…作ってるときにこうした方がよかったな、っていうのはあって…
よりよくなるかなっていう風なものを、あんまり月の半分で、じゃあもう変えます、っていう風にもしにくい。それはまず1年、そのときはそのときでやって、次の機会にこういう風にしようと。

同じかなと思っても楽しめますね。

結構同じのもありますよ(笑)。

キーマは
なくなるのが早い。

常連のお客さんからもキーマ人気ですか。

そうですね、普通のキーマ人気ですねうちは。なくなったら4種類あるカレーがなくなり次第終わっていくんですけど、キーマはなくなるのが早い。

ガルさんのキーマの特徴って何なんでしょう。

普通のキーマですか?今回のキーマですか?

どっちも知りたいです。

う~ん、どっちにしろ、具材の旨味を出すことを考えていて、スパイスもそこまできかせているわけではないです。ちょうど良い感じでバランスよくやっているって感じです。

これは最初そのまま(キーマのみ)ですか?

最初はそのままでも。今回は付け合わせは間違いなくこっち(玉ねぎ)です。

これは?

玉ねぎを醤油と酢で漬けてます。和なんで今回のカレーにはすごく合うと思います。

うん美味しい!!…アサリがキーマの方にもガッツリ入ってますね。

そうですね。身が結構入ってます。

スープが…美味しくて笑っちゃいます。。これだけでも飲める。。

そう…元々それだけのはずだったんで。

キーマだけだとそんなに辛くないですね。

そうですね、唐辛子は結構入ってるんですけど。

なんか日本のカレーってかんじです!

そう…ですね、今回はほんとにどこのカレーをベースに作ったわけではなく、イメージですね。

このカレーは何辛ですか?
辛さが後からくる感じですけど、先にくるとか後にくるとかは何で変わるんでしょう。

10段階のうち1ですね。月替わりだと2とか3のこともあります。うちは基本後からくることが多いんですけど、スパイスが何回かにくるというか…辛みって結構最後にくることが多いんで、まぁある程度はバランスの中で唐辛子が多かったりすると早めにきたりしますね。
旨味なり何なりあったりで、甘みとか野菜の感じがきて、辛みが抜けるって方が結構多いです。

具材にもよるんですね。

濃度とかもあるんで、さっぱりしてるのは最後に辛みがくることが多いです。

でもカレーで

見当違いな話かもしれないですけど、私がよく作るカレーが、調味料を豆板醤とナンプラーとココナッツオイルくらいしか入れないんですけど、味はタイカレーになるんです。スパイスとかを入れていないのにカレーになるのが不思議で、カレーの味を決めるのって何なんだろうと…。
スパイスだけじゃなくて具材とか他の味のバランスもあるのかなと。

あ~~そうですね、豆板醤を使うお店とかは聞いたことあります。またちょっと話が違うかもしれないですけど、自分が前のお店で働いていたときに、バングラディッシュの人がいはったんです。
交互にまかないを作るんで魚のカレーを作ってくれたんですけど、ほんとにカレーなんですよ、でもスパイス一個も入ってないんですよ。でもカレーで(笑)。だからそういう感覚なんですかね。それはにんにくと、トマトと魚の出汁がメインだったんですけど、カレーっていうイメージで食べてたのに、スパイスは入ってなくて。

カレー、奥深いです。

難しいですね。

カレーとして
出来上がったら

今までの記事を読むと、和カレーとかスリランカ風とか、色々ですよね。

そうですね。どのカレーっていうのはあんまりなくて、カレーとして出来上がったらまぁ良いかなという感じで。

その都度挑戦っていう感じですか?

そうですねぇ、なんかやってるのが楽しいからかなぁ…ですかね。やってみて全然見当違いのものができることもありますけど。
やっぱり出来上がったときに思ったより美味しいのができると、楽しくはなりますね。

いつも試作されて?

そうですね。いつも何となく味を思い描くんですよ。それにどうやって近づけていくかっていう感じなんですよ。ほんとに全然違うものができるときも全然ありますよ。

最初のイメージと。

あと10日間しかないのに、最初がそれだと結構ストレスですよね(笑)。締切が…みたいな感じで。

イメージと違ったものができたときは、これもまたオッケーとなるのか、それとも最初のイメージに合わせにいきます?

オッケーなこともあります。でも全然ダメなときもあります。ものとしてなんか出来上がってないというか。

意外に良かったこともあるんですか?

ありますね。意外と…というか自分が思ってたより美味しいものができることもありました。

最初に具材ありきで決めたり、ベースありきで決めたりはバラバラなんですか?

バラバラですね本当に。
どんどん色々やっていくと、最初のうちは結構何ヶ月前からこんな感じでやろうと…今は1ヶ月で追っかけるような感じで。とりあえずどこから決めるか順番は決めずに、これが良いと思ったらそれを作っていくという、出だしはほんとに色んなことで、違うところに食べに行ってとか…

違うカレー屋さんですか?

カレーは最近行けてないですけど、全然違うものを食べてカレーに近づけていって。前やったのはラーメンです。

ラーメン!ええ~。

あとイタリアンの煮込み系をこっちに持っていくとか。最初はその、インドっぽいカレーとかをやってたんですけど、色々やっていくうちに。

ラーメンて面白いですね。

ラーメンも出汁なんで。

出汁を変えると違うジャンルも融合するものですか?

そうですね、たぶん麺入れても食べれるのかなっていう風にはなるんですよ。

日本の米に合うカレーを出すっていうのが元々あって、日本の米でずっと育ってきたので、それが好きだっていう。

私前に農業の本の編集をしてたので気になるんですけど、お米ってどんなお米を使ってるんですか。

日本のお米なんですねうちは。食べてもらったら分かると思うんですけど。インドとかアジアのお米を出してはるところもありますけど、理由としては日本の米に合うカレーを出すっていうのが元々あって、日本の米でずっと育ってきたので、それが好きだっていう。
ただまぁカレーに合うように若干硬めには、水分を減らして炊いてます。

福井県

どこの米ですか?

福井県。コシヒカリとかではないです。最初は色々お米屋さんに持ってきてもらったんですけど、で話を聞いたりして、結局コシヒカリはコシヒカリで美味しいんですけど、カレーに合う…合わなくはないんですけど、カレーに一番合ってるって感じはしなかったです。
コシヒカリって元々水分が多くてモチっとしていて、甘みもあるし、逆にちょっともったいないというか、米自体が美味しいから…
もっとカレーに合う米があると良いかなぁと思ったときに今の米にしてそこからずっと。

同じ米ですか?

最初からずっと同じです。
品種を思い出そうとしてて…聞いたらあぁって言うと思うんですけど
……………………………………ハナエチゼン!

一番しっくりきた

あぁ~!

硬めに炊いても芯が残らないお米を、どうしても硬めに炊くとそれだけで硬ーく出来上がっちゃうのがあるんで、そこらへんを比べたときに一番しっくりきたんです。

全然違う話ですけど、今某企業さんが米農家の酒米作りを支援していて、そこで聞いたのがお米もそれぞれの用途に合うお米っていう感じで売り出したら、米農家さんもやる気にもなるし救われるんじゃないかという話で、例えばカレーに合う米があっても良いんじゃないかと。

ほんとにそうですね。家では難しいかもしれないですけど、うちはカレー屋だからそれもできる、お店に売り出せば。
でも結構お米屋さんが営業に来てくれますね。やっぱカレーって結構米を使ってくれるからと。

やっぱりそういうのあるんですね。

そうするとこれカレーに合いますよっていう風に言ってくれますね。何でも良いっていう感じのやり方よりそっちの方が、ある程度お客が付いちゃえばずっと使ってくれそう。

農家さんが今までは自分の米が何に使われてるかわからないけど、直接用途がわかると嬉しいっていうような話もあるみたいです。

うまく回ると良いですよね。お寿司屋さんとかでも良いですね。

野菜も福井とかからですか?

野菜はえーっと、市場に出入りしてる八百屋さんにお願いしてるんで、持って来てもらうんですけど、大体今までは西日本が多いですね。大阪、四国とか。

嬉しいっちゃ嬉しい

旬な野菜も取り入れてますか。

月替わりだとそうですね。
何かしらこう季節感は、野菜であれ魚介であれ、出したいなと、ネタがどんどん尽きてきてるっていうのもあるので。
そこでちょっと感じてもらえれば嬉しいっちゃ嬉しいです。

カレーで関東と関西の好みの違いとかってあるんですか?

ほんとに単純なことで言えば、関西は牛なんですよ。
東京は豚。ポークカレーが多いですね。

そうですね。うちは豚でした。肉じゃがもそうですもんね。
何年くらい東京にいらしたんですか?

10年くらい。個が強いですね、関西は。個々が。普通の人がいないというような感じ(笑)。

東京は地方から出てきた人の集まりみたいなイメージも。

基本そうだと思います。自分もそうだったし。

東北の人とかも多いですし、ちょっと協調性持っていこうかみたいな感じはします。カレー屋さんもそうですね。

なんか東京と大阪でだいぶ違う。

ナンのところが多い気がします。で、インド人がやってる、銀のお皿に出てくるカレー。

そうですね。日本人の方も増えてるんですけど、現地の方を突き詰めていく方が結構多いと思うんです。こっちは自分独自の感じで、そこは全然違いますね。

出さなあかんっていうのが
絶対どこかにある、関西人は。

じゃお店もやっぱり個性出していく感じなんですね。

すごいですね。そうしないと…何ですかね、でも昔からありますよね絶対こう、なんか…出さなあかんっていうのが絶対どこかにある、関西人は。

尖っていくっていう。

どこか目立ちたいと思っていると思います。

インタビューありがとうございました。
最後にこのカレーを一言で言うと?

関西らしい出汁カレー。

インタビュー:相馬 由理